・『キリン』出版を記念した、上田信治さんとのオンライントークイベント、本日でした。アーカイブもあるんだけど、チケットの購入期限がイベント開始1時間前までだったので、もし買い逃した方がいたら申し訳ない。いまイベント運営の方々にかけあってみています。
・上田さんと最初にやりとりをしたのは↑の動画で画像の使用許諾をとったときだった(上田さんは『あたしンち』のけらえいこ先生の夫かつ共作者で、版権管理などもしているため)。それから時間が経って、一対一で会話をさせていただく機会が訪れようとは思わなかった。
・私は作品と作者を割りとはっきり分けて認識しているタイプだと思う。作品は強く評価しているけれども、作者に会いたいとは感じないことのほうが多い。ただ『あたしンち』に関していえば、私にしては珍しく「この作品を世に出している人と対話してみたい」と感じていた。今回それがオンラインとはいえ叶ったのは、単純に、とてもうれしかった。
・上田さんの著書『成分表』には、「泡」の話が書かれている。
球場でプロ野球の試合を観ていたら、前の席に、乳飲み子を抱いたお父さん
が座った。
お父さんはグラウンドを見ていて、抱かれている赤子は父親の肩越しに我々を見ている。見られているのでサービスとして、応援のドンドンドンという鳴り物のリズムに合わせて繰り返し面白い顔をしてやった。赤ん坊も理解して乗ってきて、音に合わせ体をゆすりはじめた。ときどき、すごく笑う。お父さんは何も気づいていない。
こういうとき、赤ん坊の頭の中では、なにか小さな泡のようなものがピチパチピチパチとはじけているのではないだろうか。球場で、自分たちは、その気泡のざわめきを分け与えられていた。
『成分表』7p.
・「生きててよかった」となんの疑念もなく全身で感じることのできる瞬間が、人生の中には何度か(しかしたぶんほんの数回)訪れる。その数少ない機会が今日だったのではないかと思うくらい、上田さんとの会話は私にとって充実していた。子供の頃から私がずっと散らばらせてきたものを、今日の夜に、いちどに巻き取ったような爽快感というか。それは「泡」だったかもしれない。



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