数少ない娯楽

 朝、目を開けると、今日のスケジュールとフォロワーからの反応が視界に浮かんでいた。

 スマートグラスが網膜に投影する通知の群れ。SNSの反応、AIアシスタントの提案、パーソナライズされた広告。寝ている間に届いたメッセージにざっと目を通しながら、私はベッドから起き上がった。今日も一日が始まる。

 最近の息子が何を考えているのか、私にはわからない。

 カケルは11歳だ。まだ幼さの残る年齢のはずだが、最近の彼は妙に大人びたというか、疲れた顔をしている気がする。妻が言うには学校でいじめられているわけでもないようだ。成績だって悪くない。なのに、いつも何かに倦んでいるような、重たい瞼をしている。

 学校から帰ると、カケルは真っ先にグラスを外して引き出しにしまった。リビングの壁面ディスプレイには妻のフィードが流れている。友人の近況やおすすめレシピ、子育てに関する動画などだ。「お子さんの個性を伸ばす5つの習慣」というサムネイルが目に入った。妻は最近この手の動画をよく見ている。

 カケルはそれらに一瞥もくれず、自分の部屋に消えていった。

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