・みんな、どうもね。
・動画が出ています。これは大変だ。こんなことがあるなんて……。犯人が誰だったのかは見て確かめてください。
・私は事件の一部始終を目撃していた唯一の人間だ。もちろんポスターを裂いたのは犯人の責任ではあるものの、その事象そのものが起こったことについては、私を含む「空間」に原因があったと思う。
・私も止めようと思えばきっと止められたはずだから。酒は私も飲んでて記憶が曖昧な部分もあるが、確か犯人はポスターを破こうとする前に一回こっちを見て手を止めていたような気がする。つまり一種の確認をしていたわけだ。
・私はそのとき「えっ、ポスター破こうとしてんの? なんで?」と意味がわからなかったが、そこで止めに入るより「このあと何が起こるんだろう」という気持ちが勝ってしまって「ダメでしょ」と言うでもなく、なんかただそれを見ていた。それを「許可」と受け取ったうえでの奇行なのだとしたら……。
・目の前で引き裂いたのを見たときも、私はウケちゃってた。「なんで本当にそんなことすんの???????」と、意味がわからなすぎて、面白くなってしまっていた。美神のポスターを引き裂いて良いはずないのに。異常な精神状態だったのは私もだ。ひとりならあんなことはしなかっただろう。みんなで形成した空気の中で、最後にそのタガを外した人間がひとりだけ愚行の責任を負うことになる。しかし背後には一種の共犯関係があることを忘れてはならない。



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